第10回(2016)

開催日・開催場所

平成28 年11 月11 日(金)~13 日(日) 紀南文化会館(和歌山県田辺市新屋敷町1番地)

当日来場者数

4,056人

第10回田辺・弁慶映画祭 

特別上映作

田辺市で撮影が行われ、映画祭開催にも深い関わりを持つ2作品を鑑賞無料としてリバイバル上映。

幸福のスイッチ

●2006 年/日本/105 分
●監督:安田真奈
●出演:上野樹里、沢田研二、本上まなみ、中村静香、林剛史 ほか
●配給:東京テアトル

熊楠 KUMAGUSU -パイロット版-

●日本/約27 分
●監督:山本政志
●出演:町田町蔵(町田康)、渡辺哲 ほか

招待作品

海よりもまだ深く

●2016 年/日本/117 分
●監督:是枝裕和
●出演:阿部寛、真木よう子、小林聡美、リリー・フランキー、池松壮亮 ほか
●配給:ギャガ

それいけ!アンパンマン おもちゃの星のナンダとルンダ

●2016 年/日本/62 分
●監督:川越淳
●声の出演:戸田恵子、中尾隆聖、波瑠、中川礼二、中川剛 ほか
●配給:東京テアトル

『高台家の人々』

●2016 年/日本/116 分
●監督:土方政人
●出演:綾瀬はるか、斎藤工、水原希子、間宮祥太朗、坂口健太郎 ほか
●配給:東宝

母と暮せば

●2015 年/日本/130 分
●監督:山田洋次
●出演:吉永小百合、二宮和也、黒木華、浅野忠信、加藤健一 ほか
●配給:松竹

レヴェナント 蘇えりし者

●2015 年/アメリカ/157 分
●監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
●出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン ほか
●配給:20 世紀フォックス映画

モヒカン故郷に帰る

●2016 年/日本/125 分
●監督:沖田修一
●出演:松田龍平、柄本明、前田敦子、もたいまさこ、千葉雄大 ほか
●配給:東京テアトル

第10回記念映画

田辺・弁慶映画祭が第10 回を迎える事を記念し、過去のコンペティション部門入選監督を対象として田辺市内で撮影することなどを条件とした映画企画の募集を行い、そのうち最も優れた企画に対し田辺・弁慶映画祭実行委員会が制作費を補助する事業により完成した作品。

ポエトリーエンジェル

●2016 年/日本/95 分 ※2017 年5月公開予定
●監督・脚本:飯塚俊光
●出演:岡山天音、武田玲奈、下條アトム、鶴見辰吾、美保純、角田晃広(東京03)、山田真歩、芹澤興人、髙橋かすみ、松崎颯、小川あん、仲谷香春、アンジェラ、富田望生、染野有来、安田聖愛、橘実里、松田北斗、早出昭弘、アイアム野田(鬼ヶ島)、大関さおり、松浦慎一郎、服部靖司、鈴木築詩、徳江かな ほか
●配給:アークエンタテインメント株式会

コンペティション部門歴代グランプリ作品上映

第10 回開催を記念し、歴代のグランプリ作品(第4~9 回)を一挙上映。

(第 4回)『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女

●2010 年/日本/61 分
●監督:加藤行宏
●出演:山田真歩、牧野琢也、石川誠、山岸正知、関口崇則

(第5回)『チョッキン堪忍袋

●2011 年/日本/33 分
●監督:天野千尋
●出演:廣田朋菜、磯部泰宏、高木珠里、安藤匡史

(第6回)『虚しいだけ

●2012 年/日本/106 分
●監督:今橋貴
●出演:久保田芳之、山田キヌヲ、高尾祥子、諏訪太朗、谷端奏人、嶋田久作

(第7回)『あの娘、早くババアになればいいのに

●2013 年/日本/70 分
●監督:頃安祐良
●出演:中村朝佳、尾本貴史、結、切田亮介

(第8回)『ひとまずすすめ

●2014 年/日本/30 分
●監督:柴田啓佑
●出演:斉藤夏美、山田雅人、小林優斗、矢崎初音、木下あかり、木村知貴、玉川佐知、藤代太一、赤間麻里子、池浪玄八

(第9回)『モラトリアム・カットアップ

●2015 年/日本/38 分
●監督:柴野太朗
●出演:守利郁弥、大石晟雄 、竹林佑介、小林哲也、杉山つかさ、豊嶋梨那、樋口アイリ、安部直美、安部敬太、尾中正樹、中嶋莞爾

Kisssh-Kissssssh映画祭との連携上映

同じ和歌山県内で開催され、お互いに交流が行われている「Kisssh-KIssssssh(きしゅ~きしゅ~)映画祭」とのコラボレーションイベントとして、第10 回 田辺・弁慶映画祭の開催期間中、同じ会場内においてKisssh-Kissssssh 映画祭のアニメ部門・シネマ部門グランプリ作品を上映。

こんぷれっくす×コンプレックス

[アニメーション部門グランプリ]
●2015 年/日本/24 分
●監督:ふくだみゆき
●出演:林奏絵、上妻成吾、春名風花、山口遥、広江美奈、武田真人、岡田昌宜

くさいけど「愛してる」

[シネマ部門グランプリ]
●2015 年/日本/24 分
●監督:永井和男
●出演:ルーデルマン大地、上西愛理、奈須崇 ほか

第10回田辺・弁慶映画祭 コンペティション部門入選作品

平成28 年4月15 日~7月15 日の3ヶ月間インターネットやパンフレット等により告知し、過去最多の160 作品の応募があった。

作品名監督
「空(カラ)の味」塚田 万理奈 監督
「私は渦の底から」野本 梢 監督
「トータスの旅」永山 正史 監督
「林こずえの業」蔦 哲一朗 監督
「私は兵器」三間 旭浩 監督
「傀儡」松本 千晶 監督
「UNDER M∀D GROUND」松尾 豪 監督
「雪おんなの夏」亀山 睦実 監督

特別審査員

映画有識者で構成。弁慶グランプリを決定。計4 名。

掛尾良夫 氏(城西国際大学メディア学部教授、キネマ旬報社顧問)※特別審査員長
佐藤 現 氏(東映ビデオ株式会社 企画製作部/プロデューサー)
山下 慧 氏(映画評論家)
沢村 敏 氏(東京テアトル株式会社 映像事業部 映画興行部番組編成)

第10 回 田辺・弁慶映画祭 コンペティション選考総評

私たち選考委員をはじめ、映画祭実行委員会も年を追うにしたがい、応募作品数が前年を上回ってきたことに大きな喜びを感じてきた。しかし、ここ数年、私たちは応募数よりも、作品の質的向上により大きな喜びと同時に驚きを感じるようになった。田辺・弁慶映画祭コンペティションの第一の目標は、新たな才能の発掘と、彼等に映画界に一歩踏み出す機会を提供することであり、強く商業公開を意識したものである。そして10 回目は、私たちの目標と合わせたように、応募作品のレベルも飛躍的にアップした。

いわゆる自主映画のテーマは、時代背景とクリエーターの意識が色濃く現れる。田辺・弁慶映画祭がスタートした10 年前あたりまでは、“自分探し”と言われる題材をあつかったものが多数を占めていた。ある映画祭で、“自分探し”だらけの傾向に対する批判に対して、「自分探しくらいさせてやれよ」という某監督の擁護まで飛び出した。

田辺・弁慶映画祭の5〜6 回目ころには、“姉弟愛”や“ボーイズ・ラブ”といったものが目立つようになったが、10 回目の今回は、“LGBT”、“介護”、“認知症”など、今の時代が抱える多用なテーマが扱われるようになった。また、“自分探し”も、第8 回の柴田啓佑監督「ひとまずすすめ」、第9 回の松本卓也監督「サーチン・フォー・マイ・フューチャー」など、高い普遍性をもった領域に達した。

映画のテーマは時代背景とクリエーターの意識が現れると記したが、現在、中東からは数百万人を超える難民がヨーロッパに押し寄せ、世界の映画祭では、その厳しい状況を描いた作品が集まる。そこでは日本映画はなかなか太刀打ち出来ない。

しかし、田辺・弁慶映画祭10 回目の応募作品全体を通して、現在の日本が抱える様々な問題が、クリエーターそれぞれの固有の視点から描かれている。それらの作品は、単なる“閉塞状況へのアプローチ”といった一般的な流れではなく、一作品ごとに、深い洞察があり、それが普遍性をもたらしている。これは、一見大きな問題を抱えていない日本という国で、若いクリエーターたちが到達した世界的にも希有な領域である。そして、多くの作品が劇場公開に耐えうるだけでなく、世界の映画祭でも受容される普遍性を有している。これらのクリエーターは近い将来、世界の映画祭でも活躍する力を持っていると確信している。

今回、160 作品の応募から15 作品ほどの一次通過作品を選出した。そこから最終的に8 作品を選出した。選出された作品とされなかった作品の差はほとんどなかったと思う。別の選考委員が選べば別の結果が出たと思う。漏れた作品には、他の映画祭で高い評価を得た作品もあった。ほとんど甲乙つけがたい作品から、我々選考委員は、前記した映画祭の目的により近いと思った作品を選出した。

コンペティション部門 選考委員長 掛尾良夫

第10回田辺・弁慶映画祭 受賞作品

作品名監督
弁慶グランプリ「空(カラ)の味」塚田 万理奈 監督
観客賞「空(カラ)の味」塚田 万理奈 監督
映検審査員賞「空(カラ)の味」塚田 万理奈 監督
映画.com賞「私は渦の底から」野本 梢 監督
男優賞「トータスの旅」木村 知貴 さん
女優賞「空(カラ)の味」堀 春菜 さん

コンペティション部門受賞監督コメント

映画.com賞

『私は渦の底から』 

●2015 年/日本/30 分
●監督:野本梢
●出演:橋本紗也加、岡村いずみ、長尾卓磨、藤原麻希、はぐみ

【受賞コメント】
映画.com 賞をいただきまして本当にありがとうございます。本当楽しい映画祭で、来れただけですごいうれしくて…
LGBT というテーマなのですが、中々わからないと言われて終わっちゃうこともすごく多い中で、こうやってしっかり見て頂けて、本当に有難いなと思います。昨日、一昨日と何度も言われたのは、長編を撮りなさいと言われたので、また長編を撮ってここに帰って来たいと思います。
本当にありがとうございました。

【講評】
野本監督は、LGBT の方々を応援したいという思いでこの作品を作られたという風におっしゃっていました。その中で野本監督なりの、女性としての想いも乗せて、非常に作家性を感じさせられる感性と視点でそういった題材、テーマを形にして表現されていました。
また、今回この作品に主演された橋本紗也加さんの演技も非常にこの作品にリアリティを与えていたのではないかという風に感じました。まだまだ荒削りなところもあるのですが、野本監督なりの個性をこれからも伸ばしていただいて、次に長編が撮れるように頑張って頂ければと思います。おめでとうございます

市民賞

『空(カラ)の味』 

●2016 年/日本/125 分
●監督:塚田万理奈
●出演:堀春菜、松井薫平、南久松真奈、井上智之、イワゴウサトシ、柴田瑠歌、松本恭子、笠松七海、林田沙希絵

【受賞コメント】
私の事を撮ったので、私が撮りたくて撮りたくて撮った作品なので…自己満足で撮りました。
誰か響かない人がいたり、わからないとか、つまらないとか思う人がいると思いますが、それはその人の感性なのでいいと思っています。
観て頂いた方から賞を頂けて、本当に有難いです。観ていただいた皆さんありがとうございます。とても幸せです。
本当に作ってよかったと思います。ありがとうございます。

映検審査員賞

『空(カラ)の味』 

●2016 年/日本/125 分
●監督:塚田万理奈
●出演:堀春菜、松井薫平、南久松真奈、井上智之、イワゴウサトシ、柴田瑠歌、松本恭子、笠松七海、林田沙希絵

【受賞コメント】
私は正直、人に面白いと思ってもらえることを描きたいと思ったことがなくて、自分がやりたいことが一番本物だと思うので、自分のやりたいことしかできないです。
でも、それを支えてくれて、形にしてくれたのはスタッフとキャストの皆と、家族と友達と、関わってくれた全ての人なので…その人たちも私を守って作って下さったので、その出会いが作ってくれた作品です。その人たちも本当にすばらしく、とても誇りに思います。
本当に嬉しいです。ありがとうございました。

【講評】
本年の映検審査員の誰もが心に決めた作品をもち、審査に臨みました。
8作品すべての名が挙げられてそれぞれ評価されたのですけれども、1作品にしか授与できないのが宿命ですので、議論に議論を重ねまして塚田万理奈監督の『空(カラ)の味』ということに決定いたしました。
監督本人の経験に基づいた物語ということでしたけれども、それを見事に一つの作品に昇華させた構成力、それからショットの一つ一つにインパクトがみなぎっていて、2 時間強の長さを感じさせず観せる技術力、なによりも人の心を動かす映画の底力を備えているということで映検審査員賞を授与いたします。塚田監督おめでとうございます。

男優賞・女優賞

男優賞 : 木村知貴

出演…『トータスの旅』

【受賞コメント】
本当にありがとうございます。
正直、今回受賞はないと思っていたのですが、第8回のときに2作品(の出演)でこの男優賞を頂きまして、その時は合わせ技で一本みたいな、申し訳ないなという気持ちがあったのですけど…今回は長編初主演をさせて頂いて、こういう賞を頂いて、本当に嬉しく思っています。
これからもこれを糧に役者をがんばっていこうと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

女優賞 : 堀 春菜

出演…『空(カラ)の味』

【受賞コメント】
ありがとうございます。
『空(カラ)の味』は私にとってとても大切な作品で、映画愛が溢れる田辺・弁慶映画祭で初上映を迎えられたことが何よりうれしいです。今日は来ていないのですが、かなえ役の友達の役の子が本当の私の幼馴染で、その子がいたから私はがんばって乗り越えることができたと思うので、家に帰ったらまず伝えに行きたいです。
これから努力して、今度は招待作品で帰って来たいです。
がんばります!ありがとうございました。

【講評】

男優賞、『トータスの旅』の木村知貴さん。
妻を失いペットの亀に執着するダメな父親と反抗期の息子との家族の再生を見事に体現され、予想もつかない珍道中の果ての全身全霊、そして全裸でのクライマックス!圧巻
でございました。その熱演に男優賞をお送りします。
そして女優賞、『空(カラ)の味』堀春菜さん。
塚田万理奈監督の実体験を基にした本作で、監督の分身ともいえる摂食障害に陥る女子高生・聡子。そのデリケートな問題を抱えた少女の不安、衝動など微妙な心の揺れを繊
細な表情で演じ切っていました。その演技に女優賞をお送りします。おめでとうございます。

弁慶グランプリ

『空(カラ)の味』 

●2016 年/日本/125 分
●監督:塚田万理奈
●出演:堀春菜、松井薫平、南久松真奈、井上智之、イワゴウサトシ、柴田瑠歌、松本恭子、笠松七海、林田沙希絵

【受賞コメント】
『空(カラ)の味』を撮り始めてから、本当によく泣きました。カメラを回しながら泣いてくれたカメラマンも、演技をしながら泣いてくれた堀さんも…それぐらい私の事を愛してくれたので撮れました。まだ勇気がなくて家族にも見せていないのですけど、家族が私のために頑張ってくれたので…周りの皆が私を守ってくれたので作れました。
これからどう生きて行くかわからないけど、でも今日まで生きてきたことは良かったなと『空(カラ)の味』を作って思いました。本当にかわいい作品です。
私が自信を持ってかわいいと思える、娘のような存在です。可愛い娘が賞を頂いて本当に嬉しいです。ありがとうございます。

【総評】
選んでいく中で、この作品の持っている力というのは非常に強く感じました。自分の実体験を描いているということが強みと同時に、そこにあるデメリットというか、個人的な事ではないかという意見もありました。
ただ、摂食障害だけでなく、それぞれの人々が思っている色々な心の弱さみたいなものが多くの普遍性を持って受け取られ、それがこの映画の訴えるところだと思います。単に摂食障害に関心があるということだけではなくて、多くのひとに伝わるものがあった、そういう風に思います。
受賞された皆さんもこれで満足することなく、次なる飛躍、映画祭からの期待に是非応えてほしいということで、頑張って頂けたらなと思います。
今年もありがとうございました。

記念撮影

授賞式フォトセッション