第11回(2017)

開催日・開催場所

2017 年11 月10 日(金)-12 日(日) 紀南文化会館(和歌山県田辺市新屋敷町1番地)

当日来場者数

3,215人

第11回田辺・弁慶映画祭 

招待作品

『聖の青春』

●2016 年 / 日本 / 124 分
●監督:森義隆
●出演:松山ケンイチ、東出昌大、染谷将太、安田顕、柄本時生 ほか
●配給:KADOKAWA

星守る犬

●2011 年 / 日本 / 128 分
●監督:瀧本智行
●出演:西田敏行、玉山鉄二、川島海荷、余貴美子、温水洋一 ほか
●配給:東宝

『それいけ!アンパンマン ブルブルの宝探し大冒険!』

●2017 年 / 日本 / 62 分
●監督:矢野博之
●声の出演:戸田恵子、中尾隆聖、多部未華子、天野ひろゆき、ウド鈴木
●配給:東京テアトル

TOKYO デシベル

●2017 年 / 日本 / 97 分
●監督:辻仁成
●出演:松岡充、安倍なつみ、長井秀和、鈴木優希、宮地大介、入江要介、村井良大、SUGIZO(友情出演)、山中秀樹(友情出演)、坂上忍(友情出演)、安達祐実
●配給:タイタン

『おじいちゃん、死んじゃったって。』

●2017 年 / 日本 / 110 分 【PG12】
●監督:森ガキ侑大
●出演:岸井ゆきの、岩松了、美保純、岡山天音 水野美紀、光石研、小野花梨、赤間麻里子、池本啓太、大方斐紗子、五歩一豊、松澤匠
●配給:マグネタイズ

この世界の片隅に

●2016 年 / 日本 / 126 分
●監督:片渕須直
●声の出演:のん、細谷佳正、尾身美詞、稲葉菜月、牛山茂
●配給:東京テアトル

『淵に立つ』

●2016 年 / 日本・フランス合作 / 119 分
●監督:深田晃司
●出演:浅野忠信、筒井真理子、古舘寛治、太賀、篠川桃音
●配給:エレファントハウス

PARKS

●2017 年 / 日本 / 118 分
●監督:瀬田なつき
●出演:橋本愛、永野芽郁、染谷将太、石橋静河、森岡龍
●配給:boid

特別招待作品

『36.8℃ サンジュウロクドハチブ』

●2017 年 / 日本 / 65 分
●監督:安田真奈
●出演:堀田真由、岸本華和、西野凪沙、安藤瑠一、平井亜門、本間淳志、陣内智則、ジョーナカムラ、北原雅樹、橋詰優子、渡辺真起子、寺脇康文
●配給:映画24 区

Kisssh-Kissssssh映画祭との連携上映

同じ和歌山県内で開催され、お互いに交流が行われている「Kisssh-KIssssssh(きしゅ~きしゅ~)映画祭」とのコラボレーションイベントとして、第11 回 田辺・弁慶映画祭の開催期間中、同じ会場内においてKisssh-Kissssssh 映画祭の長編部門、短編部門、アニメーション部門の各グランプリ作品を上映。

おおみそか

[アニメーション部門グランプリ]
●2016 年 / 日本 / 15 分
●監督:西村有理
●かじりえこ、高橋ユミ、立花剛、上田和浩、松本伸司、森本努

真夜中モラトリアム

[短編部門グランプリ]
●2017 年 / 日本 / 24 分
●監督:磯田鉄平
●出演:南羽真里、GON、時光陸、西川莉子、永井和男、岩本守弘、松本真依

ミス ムーンライト

[長編部門グランプリ]
●2017 年 / 日本 / 119 分
●監督:松本卓也
●出演:梅村結衣、田中あさみ、浦野由衣、松本卓也、イグロヒデアキ、落合萌、雛形あきこ、勝俣州和

第11回田辺・弁慶映画祭 コンペティション部門入選作品

2017 年4月15 日-7月15 日の3ヶ月間インターネットやパンフレット等により告知し、147 作品の応募があった。

作品名監督
「赤色彗星倶楽部」武井 佑吏 監督
「三尺魂」加藤 悦生 監督
「ラストラブレター(長尺版)」森田 博之 監督
「戻る場所はもうない」笹井 歳春 監督
「みつこと宇宙こぶ」竹内 里紗 監督
「ギャルソンヌ-2つの性を持つ女-」穐山 茉由 監督
「FILAMENT」田中 大貴 監督
「ハッピーアイランド」渡邉 裕也 監督
「夜、逃げる」山田 佳奈 監督

特別審査員

映画有識者で構成。弁慶グランプリを決定。計4 名。

掛尾良夫 氏(城西国際大学メディア学部教授、キネマ旬報社顧問)※特別審査員長
深田晃司 氏(映画監督)
松崎健夫 氏(映画評論家)
沢村 敏 氏(東京テアトル株式会社 映像事業部 映画興行部番組編成)

第11回 田辺・弁慶映画祭 コンペティション選考総評

第11 回 田辺・弁慶映画祭の挨拶文でも書いたことだが、今年は応募者の技術的レベルがそうとうにアップしていた。それは、ここ数年、コンペ受賞作品がテアトル新宿で上映されていること、また、第10回記念映画「ポエトリーエンジェル」が公開されたことなどが広く浸透したからだと思われる。高いレベルの作品から、コンペティション作品を選考することは例年以上に難しかった。私たちの選考基準は、現時点での完成度よりも、作家の内面から訴えたいものがあり、それを広く普遍的に伝えようとする姿勢が感じ取れるかにポイントを置いた。それは、プロフェッショナルとして活躍できる監督を輩出するのが弁慶映画祭のテーマでもあるからだ。

今年の傾向をあげてみよう。

①今、世界の映画祭では女性監督の活躍が当たり前のようになっているが、今年の弁慶映画祭でも3 人の女性監督の作品がコンペに選考された。それぞれの作品は、男性監督が普通に映画を撮るように、“女性ならではの視点”を超えた、リキまずに自然体で語っていることに新しさを感じた。

②早稲田大学・東京藝術大学・日本大学・日本映画大学・映画美学校など、映画学科出身の監督(或いはその卒業制作作品)が過半数を占めている。これは、従来の撮影所に入社して助監督から監督へ昇進するという道が閉ざされた現在、映像教育機関の果たしている役割の重要性を示していると同時に、映画産業の人材育成における大きな問題の提起ともなって言えよう。

③地方を舞台にした作品も過半数を占める。これは、人口が大都市に集中する傾向のなかで、示し合わせた訳でもないのに、それぞれの作家が地方に眼を向けたことは、興味深いトレンドと思える。

④LGBT や介護といった現代の問題を描く人間ドラマが増えた一方、SF ファンタジーも目立った。多様なCG 効果が容易に処理できるようになったことが増加の要因と思えるが、多くは幼少の頃に楽しんだテレビ作品を自分たちで作って楽しんでいるような安易さが感じられた。東京国際映画祭の閉会式で審査委員長のトミー・リー・ジョーンズは、映画祭で出会った作品にはカー・クラッシュも大きな災害もないのが素晴らしいと、暗にハリウッドを皮肉っていたが、安易なCG の多用は危険である。その中で、自主映画ならではの狭い世界の中に普遍的な広がりを見せる作品もあった。

コンペティション部門 選考委員長 掛尾良夫

第11回田辺・弁慶映画祭 受賞作品

作品名監督
弁慶グランプリ「赤色彗星倶楽部」武井 佑吏 監督
観客賞「三尺魂」加藤 悦生 監督
キネマイスター賞「ラストラブレター(長尺版)」森田 博之 監督
映画.com賞「ラストラブレター(長尺版)」森田 博之 監督
明日への期待賞「戻る場所はもうない」笹井 歳春 監督
バンプレスト 特別賞「三尺魂」加藤 悦生 監督
男優賞「戻る場所はもうない」ルー大柴 さん
女優賞「みつこと宇宙こぶ」小松 未来 さん

コンペティション部門受賞監督コメント

映画.com賞

『ラストラブレター(長尺版)』

●2016 年 / 日本 / 58 分
●監督:森田博之
●出演:ミネオショウ、影山祐子、多田亜由美

【受賞コメント】
「ラストラブレター(長尺版)」を監督しました森田です。田辺・弁慶映画祭は今回2 回目でして、2012 年はあそこ(観客席)に座っていて賞をもらえなくて手ぶらで帰って…(他の)映画祭のコンペティションがあっても毎回賞は貰えないので、あまり期待しないようにしていたのですけど、今回は褒めていただける事が多くて、これはちょっといいことが…と思っていたら… 映画.com もアプリをいつも見ていて、嬉しくって(笑)
ありがとうございました。

【講評】
非常に面白かったです。日本映画で、なかなかSFの設定っていうのは難しいところだと思うのですけども、敢えて明確な時代を設定せずにヒューマノイドというキャラクターをもってきて、それがまた前半と後半で物語が反転するような設定にもなっていて、それプラス森田監督独特の、SFでありながらちょっと懐かしいような、レトロと未来的なものが混ざったような世界観が作られていたなというのを非常に感じました。ティーチインでもおっしゃっていましたけれども、小津安二郎監督の作品を意識されていたり、非常にその映画的な記憶というか物語とそういったものがうまく世界観の中で融合していたのではないかなという風に思いました。そんな森田監督の才能、これからもっとより良い作品をつくっていってもらえるのではないかなということで、映画.com 賞を贈らせていただきました。おめでとうございます。

キネマイスター賞

『ラストラブレター(長尺版)』

●2016 年 / 日本 / 58 分
●監督:森田博之
●出演:ミネオショウ、影山祐子、多田亜由美

【受賞コメント】
この「ラストラブレター」って作品は、軽く話すと、モデルとなった夫婦はうちの両親をモデルにしていて、実はうちの父は亡くなっていまして…こんなに賞を頂けて嬉しいです。
ありがとうございます。

【講評】
最少のキャストで、最少のロケーションで、今何ができるのか、同じ場所でも目線を変えて話をひっくり返すことで、人の印象を変えて、人物の心を覗き込みたくなるような気持ちになるなど、限られた中でCGを使わなくてもSFをやるという、映画をつくる製作者達の力に評価が集まりました。死を思う底から、ラストに繋がる流れなど、そっと胸がなでられるような…監督の(ご家族の)実際の話があるとは知らなかったのですけれど、そういった意見が多く出ていました。どの作品にも言えるのですけれど、人の心をちょっと動かすような、そういう映画を選びたい、といったことを話し合いました。全9作品、どの作品も本当に力があって、熱量があって選ぶのに審議を重ねました。「ノミネート作品に関わった全ての皆様の今後の活躍に期待しています」と、キネマイスター審査員一同想っております。ありがとうございました。

観客賞・バンプレスト特別賞

『三尺魂』 

●2017 年 / 日本 / 93 分
●監督:加藤悦生
●出演:村上穂乃佳、木ノ本嶺浩、辻しのぶ、津田寛治

【受賞コメント】
「三尺魂」の監督の加藤です。映画って観客のものだと思っているので、その観客の方に選ばれた賞はとっても嬉しいです。もしかして…一番頂きたい賞だと思っております。それと、この映画は自主制作映画なので今もコツコツと…クレジット会社に返済しているところで…賞金とっても嬉しいです!(ニッコリ)
ありがとうございます!

男優賞・女優賞

男優賞 : ルー大柴

出演…『戻る場所はもうない』

【受賞コメント】
ルー大柴、じゃなくてすみません(笑) この映画自体、脚本を作る前からルー大柴さんで映画を撮りたいってことで、ルー大柴さんが映画に出たら、どうやって魅力を出せるかっていうのを考えてつくった映画だったので、もの凄い嬉しいです。本人にもちゃんと伝えます。
どうもありがとうございました。

笹井歳春 監督 (ルー大柴さん代理)

女優賞 : 小松未来

出演…『みつこと宇宙こぶ』

【受賞コメント】
女優賞に選んで頂きました、小松未来です。他の作品の女優さんも、全ての作品において、本当に素敵な演技だったので、正直私が選ばれると思ってなくて、今びっくりしているし、何を言っていいかわからなくて、ドキドキしています…「みつこと宇宙こぶ」に出演して楽しかったし、大好きな作品で、こうして選んでいただけて、本当に幸せですし、嬉しいです。
本当にありがとうございました。

【講評】
男優賞のルー大柴さんについては、とてもキャリアがある方なので、議論が紛糾しました。最終的には率直に9本の主演した男優さんの中で最も高いパフォーマンスを発揮し
たのはルーさんであろうということで決まりました。アルツハイマーの妹への想いと、罪と罰、その間の中で葛藤する姿というのも、非常に抑制された演技でリアルに、まさ
にそこにいる人かのように演じているその演技力はやはり卓越したものがあり、後進の俳優にとっても1 つの大きな指針になる演技だったのではないのかと思います。
女優賞の小松未来さんについては、思春期のなかで揺れ動く女の子の気持ちというものを、おそらく監督の演技指導もちゃんと効いていたのだと思うのですけども、演技勘の
良さっていうのを実感しました。必ずしもリアルじゃなくても、竹内監督独特のリズムや動きを身体の表現で確実に完成させる、その演技力というのは今後に期待できるもの
だと思いましたし、そっくりの監督とあわせて、いい芝居に繋がったのではないかと(笑)
是非今後も映画に出続けて頂きたいと思います。おめでとうございます。

明日への期待賞

『戻る場所はもうない』

●2017 年 / 日本 / 39 分
●監督:笹井歳春
●出演:ルー大柴、高尾美由紀、岬万泰、新井秀幸

【受賞コメント】
こっちは僕が貰ってもいいんですよね?(笑) 凄く嬉しくて今、言葉にならないですけれど…明日への期待という事で、実はこの作品でもう辞めようと思っていたところがあって、これが最後かなぁと思っていたのですが、さっき深田監督の『淵に立つ』を観て、何かもう一本長編を撮ってからでも辞めたいなぁと思って…次に長編を撮ろうと、もう決めました。また田辺にも戻って来られるように頑張ります。どうもありがとうございました。

【総評】

本当に素晴らしかったですね。観ていて震えました。非常に感じたのは、おそらくお客さんの想像力を最大限に信頼して、非常に複雑な設定、アルツハイマーを抱えた妹と兄、誰が起こしたかも知れない失踪事件を、短い時間の中で真相を全て隠しながら、確実にお客さんに何かを想像させる。そのお客さんの想像力の部分をちゃんと残して緻密に作りこんでいく、非常に総合力の高い作品だったと思いますし、ルー大柴さんのキャスティングについても監督の慧眼が評価されるべきだと思いますし、それに応えたルーさんも素晴らしかったですし、非常に忠実につくられた完成度の高い作品で、明日への期待賞というその名のとおり、是非次回作も観たいと思わせてくれる監督、作品だったと思います。
期待しています。

弁慶グランプリ

『赤色彗星倶楽部』

●2016 年 / 日本 / 82 分
●監督:武井佑吏
●出演:羽馬千弘、手島実優、櫻井保幸、ユミコテラダンス、平山輝樹、ひと:みちゃん、三輪和音、山口陽二郎、神崎みどり

【受賞コメント】 ※授賞式時監督不在
武井佑吏がこの『赤色彗星倶楽部』をつくりまして、一緒にやろうかと最初に言ったのが2年前の話です。今日は本当に、彼が来られなくて大変申し訳ないですけれども…(グランプリを)取れると思ってなかったので、正直なところ…まさかの…何も準備していなくて、心の準備も何も。話すことも全然決めていなくて…本当にありがとうございます。
渡邉雅紀さん(撮影・編集)

ありがとうございます。私も今年、何も賞取れないかなと思っていたので呼ばれて、ワー!エー!って言ってしまいました。あと、これ(グランプリ楯)すごく重たいです(笑)
初めて田辺・弁慶映画祭に参加させて頂いて、3日間、本当に本当にすごく楽しかったです。グランプリ頂けて嬉しいのはもちろんですけど、皆さんと3日間、色んなお話させて頂いて、スタッフさんや審査員の方含め、田辺に住んでいらっしゃる皆さんにも、すごく親切にしていただいて…皆さんで出来ている映画祭だと思いました。これから群馬に電車で帰るのですが、群馬の人に、「田辺すごく良いところでした」とたくさん言います。本当にありがとうございました。
手島実優さん(出演)

【武井監督 受賞コメント】
『赤色彗星倶楽部』を監督した武井です。グランプリという高い評価を頂きありがとうございます。 残念ながら仕事の都合で会場に駆けつけることは叶わなかったのですが、授賞式の時間には作業の手を休め、参加したスタッフ、キャストからの連絡をジッと待っておりました。そして、結果たいへんに栄誉ある賞。本当に嬉しかったです。田辺市から遠く離れ東京で一人、その喜びを噛み締めておりました。映画祭期間中は、参加した渡邉、手島から逐一その様子を伺っていましたが、二人とも口を揃えて楽しい!楽しい!と、一体どんな映画祭なんだろう・・・と参加できない遣る方無い気持のやり場に困っていました。銭湯に行くのに通りかかった車が乗せてくれた。などなど、田辺市での素敵なエピソードは尽きないようです。来年度の田辺・弁慶映画祭には、ぜひこの無念を晴らすべく馳せ参じたいと思います。最後になりましたが、映画祭関係者の皆様、観客の皆様、ご迷惑をおかけしました。そして、本当にありがとうございました。

【総評】
先程、深田監督が完成度ということを言っていましたが、完成度と同時に足りないところがあっても将来期待できるという、そういう見方もあってですね、どっちがということでして…そういう位置づけでもいいのかなと思います。また、グランプリ、監督がいなかったというのは史上初になります。だから、あげなくでもいいのではないかというそんな話もありました(笑)それから、ルー大柴さんもそうですけど、今回はキャストが豪華な作品がいっぱいありまして、そういうキャストが、主演賞というのはどうかという意見もありました。また女優賞が、去年もそうでしたがそれぞれ素晴らしい。もう、みんな全員にあげたいなぁとも思いました。そして、いわゆる名の通った方のキャスティングということはどうだろうということも、ただ一方で、情熱をもってそういう俳優さんのところにいくと、意外に受け止めてくれる俳優さんが多いですね。そういう情熱も、監督及びプロデューサーの力だということで、評価の対象にすると、そういうことで大柴さんに男優賞ということになりました。
弁慶映画祭11 年目で、ますますレベルの高い作品が集まるようになったと思います。(賞に)選ばれなかった方も、選ばれた方に負けないような活躍を期待したいと思います。どうも3日間楽しい時間をありがとうございました。

記念撮影

授賞式